人が発酵と出会って数千年、17世紀に微生物を発見して340年ほどが経ちました。現代では、発酵産業の生産高は数十兆円にも及ぶと言われます。
最も大きな比率を占めるのは医薬品で、抗生物質の他、胃腸薬、ビタミンなどが発酵で作られています。他にアミノ酸、核酸、糖などの化学製品などがあり、アルコール、味噌や醤油などの発酵食品も変わらずに私たちの暮らしを支えてくれています。
発酵が環境問題に貢献
さらに発酵は、21世紀が抱える諸問題を解決する切り札としても期待されています。そのひとつが環境問題です。
発酵によって、既に環境の改善がみられるのは工場排水です。河川が一時期よりきれいになったのは、排水の有害物質を発酵で分解して川に流しているからです。
また、今後が期待されるものにコンポストがあります。コンポストとは、生ごみなどの有機物を微生物の活動(=発酵)により堆肥に変える仕組みのことを言います。できた堆肥や、その際に使用する容器もコンポストと呼ばれます。
現在、生ごみは多くの自治体で焼却処理されていますが、それは大量の二酸化炭素が排出され、有毒物質のダイオキシンも発生しやすい処理方法です。この問題を解決すべく、大規模化・効率化したコンポストでごみ処理に取り組む自治体があります。また、海外に目を向けると、エコ先進国のヨーロッパ諸国では、家庭でも自治体でもコンポストの導入が進んでいます。空気を汚さず堆肥も得られる豊かな発酵のチカラを、日本でもより積極的に利用することが望まれます。
今後も思いがけない発酵のチカラが、環境問題を解決に導くかもしれません。
発酵食品が健康寿命を伸ばす
健康維持と病気の問題でも、発酵の活躍が期待されています。
最近、心身の健康を保つための最も重要な臓器として腸が注目されています。腸には、免疫力強化、アレルギーの予防、血圧や血中コレステロールの低下、精神的な不調の解消など様々な働きがあり、発酵食品を食べることでその働きをより強められるのです。高齢化が進む社会で健康寿命を伸ばすために、発酵食品の摂取は欠かせない習慣です。
また病気になった時には、発酵で製造した医薬品が私たちを助けてくれます。抗ガン剤、抗ウイルス剤など、抗生物質にはまだまだ開発の余地があると言われます。
地球は微生物が司っている?
人間は、環境、健康、食料などあらゆる側面で微生物の働きに支えられています。また生物として微生物は人間よりずっと先輩であり、人間の体内にも多くの微生物が住んでいるのですから、「微生物が地球を司っている」と表現しても言い過ぎではないかもしれません。
勇心酒造は、酒蔵として160年のあいだ微生物と発酵に向き合うことで、その大きな力を肌で感じ、知ることができました。これからも、そのチカラをより人に役立てるために研究を続けます。