香川の地でのびのびと育った、後の5代目社長である
現在の「ライスパワー」で知られる勇心酒造の研究対象は
そのことを考えると東北大学への進学を勧めた先代には先見の明があったと思えてなりません。
微生物研究に没頭する毎日
先代の目は正しく、東北大学に入学した徳山はサークルなどにも入らず、麹菌が作る糖の研究に没頭しました。高校のときはあまり得意ではなかった化学も、大学で理論的に生物化学を学んだことでその面白さに目覚めます。糖は生き物をつくり、生き物が活動するためのエネルギーとなる・・・糖の研究を通して生命の多様さに驚かされるとともに、これまで五感に頼る造り酒屋の世界に育った徳山には、科学の視点での研究は面白く、勉強漬けの毎日が続きました。
しかし、その生物化学の魅力を教えてくれた麻生教授は徳山が大学3年生のときに急逝。師を失った徳山は再び福家氏に相談に行ったところ、東京大学大学院への進学を勧められました。
そこで次に籍を置いたのが応用微生物研究所(現・分子細胞生物学研究所)。今までとは違い、農学部だけでなく理学部、薬学部の研究者が学部横断的に集まっていました。
徳山はここで、その後の人生を大きく左右する2人の人物に出会うこととなるのです。
人生を動かす出会い①植村定治郎教授
東京大学大学院に進学し、指導を仰いだのは微生物生態学の提唱者であり、その分野での第一人者である
徳山は教授から多くの微生物学を学びましたが、それ以上に教授が微生物学の向こうに説く
「生物が環境により変化していること」
「自然と人間が調和して生きることの大切さ」
という考えに強い共感を覚えたのです。
それから、「人間とは何か」「自然とは何か」を考えるようになります。
そして1966年(昭和41年)からの博士課程の時期にひとつの「自然観」にたどり着くのです――。