徳島大学の荒瀬教授との共同研究のもと、待望の新素材が完成しました。1995年には医薬部外品の新規効能を持つ素材として申請作業へと進みます。
以前、申請を行った米発酵エキス(第5話『入浴剤を開発』参照)が3ヶ月という異例の速さで承認を受けたことを考えると、申請を行い、あとは結果を待つのみだと考えていました。
しかし、ここからの道のりが長かったのです――。
10年間の時間を要した承認作業
しかし、ライスパワーエキスは従来とは異なる素材であったため、担当部署すらなかなか決まらず、申請自体に時間がかかりました。複数の部署を行ったり来たりする日々。それでも指示された書類の提出を繰り返し、なんとか申請までこぎつけました。
ところが認可を直前に、新たな問題が行く手を阻みます。
ちょうどこの頃、厚生労働省は薬害エイズ問題で揺れており、申請をおこなった薬務局自体が解体してしまったのです。新たな担当部署からは有効成分を明らかにせよ、作用機序を解明せよと、次々に新たな課題が課せられました。
徳山と荒瀬教授の二人は課された課題に答えるべく、何度も何度も追加試験を行いました。実験を重ね、課題をクリアし、求められたデータはすべて提出しましたが、承認作業は遅々として進みませんでした・・・。
承認に時間がかかったのは「皮膚水分保持能の改善」というライスパワーNo.11の効能が薬事法の想定外であった、という理由もあります。従来の薬事法で定められた効能とは異なったその効能を医薬部外品として認めてもらうには、医薬部外品の効能として「水分保持能の改善」を新たな項目に追加してもらう必要がありました。
新しい効能の追加は薬事法制定以来、例がありませんでした。それだけに当局も承認作業に慎重にならざるを得なかったのでしょう。
ついに!医薬部外品の新規効能が認められる
進まない承認作業に、繰り返し行われるデータ要求――。それでも、徳山をはじめとする研究員は粘り強く応え続けました。
そうして様々な問題を乗り越え、最初の申請から6年が経過した2001年9月、ライスパワーNo.11は医薬部外品の新規有効成分として承認されました。基礎研究段階から数えると10年近くが経過。ライスパワーNo.11の効能である「皮膚水分保持能の改善」は医薬部外品制度ができて以来、初めての新規効能となったのです。
承認の第一報が入ったときにはその場にいた社員全員から思わず拍手が沸き起こりました。
苦労の連続だった徳山の研究に、光が差した瞬間でした。
後に承認書が勇心酒造に届いた日には、徳山は会社に研究スタッフを呼び集め、承認書を回覧しました。回覧し終えた後に、徳山は承認書を神棚に供え、今まで力を貸してくれた方々にみんなで感謝の気持ちを伝えました。
そうして承認を得たライスパワーNo.11は化粧品業界の注目するところとなり、大手メーカーからの商品化の申し出が相次ぎました。
2004年に大手メーカーより発売されたライスパワーNo.11配合の化粧品は、発売から1週間で20万本を売り上げる大ヒット商品にまでなりました。
同時に、勇心酒造も自社ブランドとして化粧品や外用剤を発売します。そして生まれるのが『アトピスマイル』なのです――。